【簡単に解説】廃用症候群とは?寝たきりを予防するには‥

目次

廃用症候群とは何か

廃用症候群ってご存知でしょうか?少し聞きなれない言葉かも知れません。病気や怪我などで,安静にしている事によって起こる身体の状態の事です。長期間の安静状態や運動量の減少は身体機能が衰え、心身の様々な機能が低下してしまうのです。体を動かすという事は、筋肉や関節を動かすだけでなく、たくさんの臓器の働きにも関わります。体を動かさない状態が長く続くと、運動面だけでなく、心や内臓の働きも低下するのです。今回は廃用症候群についてまとめてみたいと思います。

廃用症候群の症状のまとめ

運動器筋肉の萎縮・筋力の低下、骨密度の低下、関節の拘縮
循環器起立性低血圧・静脈血栓・持久力の低下
呼吸器換気障害・無気肺・肺炎
精神・認知認知機能低下・睡眠障害・うつ病
泌尿器尿路結石・尿路感染症
消化器食欲低下・便秘
皮膚褥瘡
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廃用症候群の様々な症状

運動器への影響

廃用症候群の症状のなかで一番イメージしやすいのが、筋肉や骨、関節などの運動器への障害だと思います。過度の安静は、筋肉の萎縮(筋力低下)筋肉の伸張性の低下(筋肉が伸びにくく硬くなる)と言った筋肉への影響と、骨密度の低下(骨折しやすくなる)関節拘縮(関節が固くなる・関節が曲げ伸ばししにくい)と言った骨、関節に影響します。

筋肉の萎縮・筋力の低下、骨密度の低下、関節の拘縮

結果として、歩いたら転倒しやすくなったり、立てない歩けないなど日常の生活動作に反映されます。

循環器への影響

常に寝ている状態だと、 2 週間で血漿量の 8~12%、減少するといわれています。その結果、血液粘稠度は増加し静脈血栓の危険性が高まります。そこに加え、四肢の筋萎縮から交感神経活動が障害され、下肢の血管収縮が不十分となるので静脈還流量が減少します。1 回の心拍出量が低下し(心機能の低下)脳への血液量も低下するので起立性低血圧を起しやすくなります。

起立性低血圧・静脈血栓・持久力の低下

循環血液量の減少と心機能の低下に加え、筋肉量まで減ると最大酸素摂取量は低下。倦怠感や疲れやすくなるので、活動しにくくなります。※最大酸素摂取量とは「1分間に体内に取り込まれる酸素の最大量」をいい、全身持久力の指標。

呼吸器への影響

座っている時と比べ寝ている姿勢は呼吸が少し浅くなります。それは寝ている時は座っている時と比べ、胸郭(胸の骨)や肺があまり広がらない状態を意味しています。長期間その様な姿勢で過ごすと胸郭の可動域制限や肺が伸びにくくなります

換気障害・無気肺・肺炎

そこに、呼吸筋の筋力低下も起こるので、肺に空気を十分に出し入れできなくなります。結果、軽い運動でも息切れしやすくなります。また、食事で気管に入った時に咳をする力も弱くなるので誤嚥性肺炎のリスクも増してきます。背臥位姿勢が長期間続くと、重力の影響で分泌物が背部に貯留するので、呼吸感難感を憎悪させます。

精神・認知面への影響

室内で長期間寝たきりのままになると、外界からの刺激(光・匂い・音など)の量が極端に低下します。ずーと天井をみている状態で脳を使う機会が無いと認知機能も低下していきます。昼夜逆転による睡眠障害や、せん妄(妄想や幻覚を見て興奮する状態)も起こりやすくなります

認知機能低下・睡眠障害・うつ病

また、家族以外とのつながりが途絶えてしまうことや、今まで当たり前にできていた事ができなくなってしまうみじめさから、うつ病を発症する事もあります。

泌尿器への影響

尿路結石は寝たきりの方に多いことが知られています。これは運動が不足するために骨からカルシウムが抜けて尿から多くのカルシウムが出てくるためです。また、仮に結石が出来たとしても小さいうちは、運動によって排石されやすくなると言われています。

尿路結石・尿路感染症

長期間寝たきりになった場合など、尿道に管を入れる尿道留置カテーテルが挿入される事がありますが、免疫力が低下すると、尿路感染症も起きやすくなり、発熱の原因となります

消化器への影響

活動量が低下すれば食欲も無くなります。満足に食事できなくなる日が続くと、全身の栄養状態が悪化するため、風邪をひきやすく、誤嚥性肺炎や褥瘡の原因にもなります。

食欲低下・便秘

また、運動不足になると便を動かす腸の蠕動運動も低下する傾向になるので便を排出する力が弱くなります。そこに加えて寝ている姿勢や腹筋が低下すると、より便が出にくくなり、腸の中に便が停滞してしまいます。

皮膚への影響

長い間、同じ姿勢でベッドに横になっている事により、体の一部が圧迫され血行障害が起こります。これにより圧迫された部分の皮膚が壊死する状態が床ずれ(褥瘡:じょくそう)です。廃用症候群が進行したなかで、は、全身状態が悪い事が多く、同じ姿勢を長時間取る事も増えるので褥瘡も発生しやすくなります

褥瘡

廃用症候群の原因は大きく分けて3つ

安静臥床

転倒等による骨折後のギブス固定や心臓や肺などの内臓疾患の手術後など、治療を目的として安静を強いられる事は多いと思います。安静の度合いにもよりますが、過度な安静は特に廃用症候群は起こりやすくなります。例としては、急性期疾患、慢性疾患の急性増悪、骨折、頭部外傷などによる安静など・・

身体の後遺症等による運動量の低下

病気の発症後の後遺症として、身体の麻痺や心肺機能の低下、骨折後の痛みや筋力低下等が改善しないと発症前と比べると動きにくくなりますよね。そうなると、運動量は以前と比べ減ってしまうので廃用症候群は起こりやすくなります。

慢性疾患の影響

慢性的に痛みや転倒に対する恐怖心、麻痺や心肺機能の低下が改善しないと、日常生活の活動性が乏しくなっていく事は想像できると思います。こころの状態が後ろ向きでも不動や不活発は生じてきますよね。そういった原因でも廃用症候群は進んでいく事になります。特に高齢者の場合、本人が自覚しない程度に、徐々に筋力低下が起こっています。安静・臥床を強いられることで、いろいろな能力は低下していきます。



廃用症候(寝たきり)の予防・改善方法

廃用症候群(寝たきり)を予防・改善するために要する期間は、廃用症候群になっていた期間の数倍になると言われ、 一度なってしまうと改善するのに時間はかかります。長期的に安静状態になる事はなるべく避けるようにし、積極的にリハビリを行い廃用症候群の予防をする事が大切です。では、どのように廃用症候群を予防・改善していくのか、その方法をご紹介します。

予防① 身体を動かす機会を増やす

廃用症候群の一番の予防は、できるだ身体を動かす事。本人ができる事はなるべく自分で行ってもらいましょう。着替えや排泄などの身の回りの事から、簡単な家事など、少しでも体を動かす事が大事です。散歩や体操などを毎日の習慣にしても良いでしょう。同じ趣味の人たちが集まるグループの活動やイベントなどの参加なども身体を動かす良いきっかけとなります。 ベッド上で安静にしている場合は、簡単なマッサージや自身で身体を動かせる範囲で動かすのも運動になります。

予防 ②:栄養のバランスがとれた食事摂取

低栄養状態は、筋肉量の減少など運動機能の低下に繋がり活動が億劫になるかも知れません。筋肉づくりに必要なたんぱく質(肉類、大豆類、乳製品)を摂るなど、栄養バランスの整った食事を心掛け、体を動かすために必要なエネルギーをしっかり補給する様に心掛けましょう。 食欲がない場合は、健康状態を観察してなぜ食欲不振なのかをみつけてあげましょう。

廃用症候群(寝たきり)予防の為の治療やサービス

薬物療法

廃用症候群は現病歴や既往歴からの影響で起こる事が多いので、薬物療法改善がみられる事もあります。例えば、関節痛などの痛みで動けないのであれば痛み止め、精神障害で気持ちが前向きにならなければ心へのお薬など。薬物療法が有効であると医師が判断し、それぞれの症状に合わせて薬が処方される事はあります。投薬治療が有効な場合もありますが、自己判断で市販薬を使用すると症状の悪化に繋がる事もあるので、必ず医療機関を受診して適切な薬を処方してもらう方が良いでしょう。

リハビリテーション

廃用症候群の対処法としては、リハビリテーションが一番中心になるとサービスだと思います。病院などの専門の施設でリハビリを受けるのが難しい場合は、訪問リハビリの利用も可能です。そもそも廃用症候群の方は家のベッドから起きれない方も多いです。リハビリを受ける為に家に来てもらうのも一案です。ベッドから離れられる様なアプローチを行い、気持ちを前向きにしたり、寝たきりにならない様に運動を進めてくれます。他にも残存機能を生かした日常生活での動作方法の練習や指導もしてくれます。

適切な介護用品・福祉用具を使用する

車いすや杖、歩行器などの介護用品・福祉用具を使う事で、身体が動きやすくなったり、動いた時の負担が軽減する事やよくある事だと思います。専門職に身体状況を見てもらい、住環境に合ったものを使用する。それだけで、活動量が増して廃用症候群の改善に繋がるかもしれません。

廃用症候群についてのまとめ

一度なってしまうと回復に時間のかかる廃用症候群。予防のためにも、普段からバランスの良い栄養を摂り体を動かす習慣をつけ、運動機能の維持・向上を目指した生活を心がけることが大切です。病気やケガは避けられない事もあります。もし安静にする必要がある時は医療関係者や介護のプロたちに協力してもらいながら、回復に向けてリハビリを継続していくことが重要です。

どのような質問でも大丈夫です。お困りの方は八尾市 にじリハ訪問看護ステーションの方まで、是非お気軽にお問合せ下さい。

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