2022年3月15日 最終更新日時 :2022年3月16日 にじリハ花子
食事介助で姿勢を選定する前の留意点
嚥下は姿勢が大事とよく言われますよね。なぜかと言うと姿勢が変わると飲食物を摂取した時の口の中や喉の通り方が変わるからです。食事介助で姿勢を選定する前にまず留意点として、当然の事ながら全ての問題点を解決する姿勢というのは無くて一長一短。その人に合わせた姿勢の選定が大事になるという事です。ここでは姿勢と嚥下の違いを紹介したいと思います。
嚥下しやすい食事姿勢(頭頚部の角度の違い)
頸部は軽度前屈に選定するのが第一選択になるかと思います。前屈すると食べ物を口の中に取り込みやすいし、舌骨の移動距離が短くなる事から飲み込みやすくなります。ただ、舌に問題があると上手く送りこめずダラダラ口から出てくるかも知れません。それは口の中は元々傾斜になっていて前屈すると坂道を登って咽頭に送り込まなにといけないからです。
逆に伸展位にすると口の中は下り坂になるから咽頭に送り込みやすくなります。気管も開大し息もしやすくなります。ただご存知の通り頸部伸展は嚥下はしにくくなり気管の方にも流入しやすくなります。頸部前屈が第一選択ですが、むせにくい人で送り込みや呼吸に問題がある人は頸部伸展位で食べる事も考慮する必要はあるかもしれませんね。
嚥下しやすい食事姿勢とは(上体の角度の違い)
ここでは座位とリクライニング位で比較しています。自力摂取を目指すなら上体を起こす方が良い事は理解しやすいと思います。食べ物を認識しやすいし食べ物との距離が近くなるので上肢での操作もしやすくなりますよね。食塊を舌で保持しやすいし食道通過も早いです。ただゴックンを失敗すると重力の影響で気管の奥の方まで垂れ込んでしまう事になります。
比べてリクライニング位になると解剖学的構造上、気管が上、食道が下に位置するように変わります。口腔内は下り坂にもなるので咽頭に送り込みやすく、咽頭に送り込んだ後も食べ物は重力の影響で食道の方に流れやすくなります。ただ、食塊保持がしにくくなり一口量が多くなると誤嚥が増える事もあります。食べ物は認識しにくくなり座位と比べ咳をする力が弱くなり誤嚥した際に喀出しにくくなったりもします。この様に上体の角度を変えだけでも色々変わってくるんですよね。どの姿勢がその方に合っているのかは、ある程度try&errorで試すしか無いと思います。
完全側臥位法
福村直毅医師が提唱している完全側臥位法。側臥位で食べるとむせにくくなると言われてもイメージできます?なかなかイメージ出来ないと思います。自分も最初は半信半疑でしたが実際にやってみると意外に有効なのは肌で感じています。では何故でしょう・・誤嚥の多くは梨状窩に貯留した飲食物があふれて気管に流入します。「側臥位になると梨状窩だけでなく咽頭側壁にも貯留する様になります。約20CC位は貯められる様になるので、座位でゴックンのタイミングが合わずむせる人や、梨状窩に残留して気管に流入する人は改善が期待できる姿勢です。他にも、誤嚥した場合、座位だと重力の影響で気管~肺の奥に飲食物が流入します。側臥位だと重力の影響をあまり受けないので気管や肺の奥には飲食物は流入しにくくなります。」+αとして、気管の奥まで垂れこまないので、繊毛運動で気管の入り口まで送り出しやすくなる事も考えられます。つまり誤嚥性肺炎予防も期待できる姿勢となります。
ただデメリットとして医療・福祉の業界にまだまだ知られていないので、説明に対する理解が得られにくかったり、導入する事にビックリされる事も多いです。他にも細かい事を言うと、口腔での送り込みが難しくなったり認知症の人は食べ物を認識しにくくなったりして食べにくくなる事もあります。その様な時は上手く摂取できるように試行錯誤が必要だと思います。食事評価で姿勢を選定する場合に、第一選択でチョイスする事はあまりありませんが、あの手、この手で対策してもムセる場合は導入すると改善する事は多々みられますよ。
まとめ
代表的な食事姿勢を説明させて頂きました。食事でムセる人の対策として「食事形態」「食事介助の方法」は上がってきやすいと思います。でも実際は付け加えて「食事姿勢」も検討する事はとても大事だと思います。安全かつ楽しく食事する為にも姿勢の選定も見直してみましょう。自信が無い時は専門職に見てもらうのが一番だと思います。
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