終末期リハビリテーション ~癌末期を中心に~

目次

人生の最期

人生の最期を迎える前の人にリハビリテーションをする必要はあるのでしょうか?必要ないと思われている医療福祉関係者は一定多数いるかと思います。では実際はどうなんでしょう?個人的な印象としては△。出来るだけ最期までリハビリをして良かったという人。状態が不安定でリハビリをする余地がない人。そもそも本人、家族が必要と感じていない。終末期のリハビリが何をするのかが分からない。という所に意見は分かれると思います。では、終末期ではどういう人にリハビリを提供すると、より良い終末期ケアに繋がるのでしょうか?

終末期とは簡単に

終末期は人生の最後の時期の事を言います。この時期には身体的にも精神的にも様々な苦痛が本人、家族に生じる事になります。この様な複雑な苦痛をトータルペイン(全人的苦痛)と言います。なので、治療よりQOLに重きを置いた多様なケアが必要になる時期になります。リハビリテーションも同様でキュアでは無くケアとしての関わりが求められると思います。

終末期リハビリテーションの目的

終末期リハビリテーションを行う目的は主に対象者本人と家族とに分けて考えられると思います。

本人の場合

「最期の瞬間までその人らしく生活して頂く」という事は、終末期ケアのなかで大事な目標の1つだと思います。ただ実際は、病状の進行とともに喪失体験の連続。日々苦悩し心身ともにつらい時期になります。この苦しみを上記のトータルペインと考えた時に、人にもよりますが、リハビリテーションを行う事で、身体的苦痛、精神的苦痛、スピリチュアルな苦痛の緩和に少しでも寄与するのではないかと感じています。具体的にリハビリをする目的としては、以下の内容があげられると思います。

ポテンシャルを生かしADLや趣味に反映

QOLとADLは深く繋がっており、ADLの低下はQOLも低下する事が考えられます。特に身体的苦痛(ADLへの支障)の緩和という所では、リハビリ専門職による機能面の評価は、ポテンシャルを生かし、本人が出来る事を反映させる可能性があります。「最期の瞬間までその人らしく生活して頂く」為に重要な視点だと思います。とはいえ、リハビリをするからといって良くはならない時期が終末期。ADL低下は避けられず喪失体験の連続で気持ちが後ろ向きになってしまいます。そのなかでも、リハビリをする事で感情を表出し、少しでも前向きにしながら現在のADLの状況を受け入れてもらい、人生を肯定的に捉える支援をする事も重要だと思います。

苦痛緩和と安楽の提供

終末期には痛みや倦怠感・呼吸苦や不眠に悩んでいる人は多くいます。筋肉をほぐし、リラクゼーションをする事やポジショニングで痛みや倦怠感の改善を促します。動作時に痛みや疲労が出る様な時は、動作指導や環境調整という視点で改善に働きかけます。

気持ちを前向きにし精神的苦痛を緩和

リハビリテーションは医療・福祉の数あるサービスのなかでも非常に明るいサービスの1つで、リハビリの意味である「全人間的復権」は対象者を前向にさせる力があると思います。それは終末期においても一緒であり、可能な範囲で体を動かす支援や食べる支援、痛みの部分に触れてマッサージを行い話を聞く事は、後ろ向きになる気持ちを前に向ける効果が期待できます。ただ時と場合によっては、リハビリテーションという前向きなツールが逆につらく感じる対象者もいると思います。その様な時はリハビリを終了するのも一案ですが、アロママッサージやリラクゼーション等のサービスに変更し、より症状緩和に徹底する事で継続を選択する事も多いと思います。あくまでも、本人の要望に寄り添いながら支援していく事が重要になります。

家族の場合

上記のトータルペインは本人だけでなく、ともに暮らす家族にも当てはまる事だと考えています。介護による不眠や場合によっては腰痛などの身体的な痛み、予後に対する不安感。経済面の心配や人によってはスピリチュアルな痛みなど。終末期に家族ケアが大事なのは周知な事だと思います。その中でリハビリテーションを行う目的を、家族ケアとして考えた時に以下の内容があげられると思います。

介助方法の指導

症状の進行により自立した生活は難しくなってきます。その人に合った介助方法を指導する事で家族の身体的負担軽減だけでなく、ポテンシャルを生かしADLに反映する事ができる可能性もあります

家族の精神的苦痛を緩和

終末期の苦しい闘病のなかでも、「自分でトイレで排泄したい」「歩きたい」等の要望があった時、家族はどの様に思うでしょう?状況にもよりますが、希望を持たずに早く諦めて欲しいと思う人は、ほとんどいないと思います。多くの場合、どうにかしてあげたいと思ったり、いずれ無理になるのは分かっているけど、出来るだけ前向きでいて欲しいと思う家族が多い様に感じます。後ろ向きな気持ちになると悲観的な言動になってしまい、そばで見ている家族もつらいのではないかと考えます。けど、リハビリを行うと、本人の気持ちが少しでも前に向く事は多々見受けられます。その前向きな姿勢や言動を聞く事で、家族の精神的苦痛の緩和に少しでも寄与する事ができるかもしれません。ただ本人との関わりと一緒で、リハビリテーションという前向きなツールが逆につらく感じる事があるかもしれません。その様な時は無理に進めず、本人・家族の出す答えを確認しましょう。

終末期リハビリテーションのアプローチ(癌末期を中心に)

大まかですが終末期前期、中期、後期の3つに分けて説明します。

ADLが自立の時期(終末期前期)

全身状態を確認しながら、ADLやQOLの維持を図る目的で様々な機能訓練を行います。関節可動域運動や筋力増強運動、上肢機能訓練や呼吸リハビリ、嚥下リハビリ、歩行練習やADL訓練等があります。倦怠感が強い時はこの時期からリラクゼーションの実施も対象となります。

ADLに介助が必要になってくる時期(終末期中期)

痛み、倦怠感、呼吸苦等の進行する症状を緩和するとともに、ADL等の生活上の制限に対して、変わりの手段を含めた援助を行いQOLの維持を図ります。可能であれば、活動性低下による廃用性症候群の予防や改善も重要となる時期になります。

全介助で寝たきりの時期(終末期後期)

苦痛症状の緩和が主体の時期になります。リラクゼーションやアロママッサージなど、リハビリ専門職がアプローチを行い、対象者本人が心地良いと思ってもらえる様なアプローチが望ましくなってくると思います。この時期でも運動を希望するようであれば、パフォーマンスとして下肢の曲げ伸ばし程度の実施で応えるのも良いと思われます。

終末期のリハビリを中止するならいつ?

いつまでリハビリするが良いのでしょうか?医師の判断にもよりますが、終末期ではリハビリの中止基準というのは、よっぽど状態が不安定でない限りは明確な答えは無いように思います。なぜなら、病気が進行すると、すでに普段の生活場面の方がリハビリより負荷がかかっている事の方が多いからです。その様な時は、リハビリでは負荷のかからない関わりになります。本人・家族の要望を確認した上で無理の無い範囲でリハビリを実施していく事になると思います。
病態が進行し、死が差し迫った段階を迎えると医学的なリハビリの意味はほとんどなくなると思います。ただ、その段階でリハビリ専門職の判断だけで訪問しなくなると、かえって本人・家族の喪失感に繋がる事も考えられます。担当者として関わったからこそ「できるケア」も残されているかも知れません。本人・家族が希望し続ける限りは最期まで役割を果たしていく事が大切だと思います。

がんのリハビリテーションガイドラインでは・・

終末期リハビリテーションについてまとめてみました。がんのリハビリテーションガイドラインでは、詳細は割愛しますが、在宅進行がん・末期がん患者のリハの介入とその効果として多数の項目でグレード B(行うよう勧められる)と判定されています。以上の事から緩和ケアでも、可能であればリハビリを行う方がより良い看取りに繋がるかもしれませんね。

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